私が木と話すようになったのは、大人になってからです。 いつの頃からか、朝、目覚めて窓の外のブナの木に声をかけると、「おはよう。」と答えてくれているような気がしてきたのです。とても疲れたとき、行く道の見えないとき、音にならないその声に、じっと耳を傾けているだけで、静かな優しい力をもらえるのだと気付いてから、私の人生は、それまでの何倍も、豊かなものになりました。 数えきれないいのちが、互いに支え合っているこの地球(ほし)に、私もまた生き、終わりのないシンフォニーの、大切な一音を奏でている。当たり前なのだけれど、忘れがちな気持ちを、いつも思い出したくて、この物語を書きました。読み終わって、耳を澄ますと、かたわらの鉢植えの小さなささやきが聴こえてきたら、とても幸せです。 -鈴木重子-
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